行政書士 佐藤博英のブログ

帰化申請

日本人とは日本国籍をもっている人のことをいい、日本国籍を持たない人は外国人となります。外国人が日本国籍を取得するには、①出生、②届出、③帰化の3つの方法があります。


①出生とは、生まれるときに父または母が日本人である場合に、認められることです。

②届出とは、国籍取得届のことであり、次のケースがあてはまります。


A.外国で生まれた日本人の子で、出生時から3か月以内に日本国籍留保の届出をしなかったために、日本国籍を失った20歳未満で日本に住所がある方が再取得の届出を行って日本国籍を取得するケース

B.国籍法が平成20年12月12日に改正(平成21年1月1日施行)され、次の条件を満たしているケースも届出をすることにより、日本国籍が取得できます。ただし、嘘の届出をすると罰せられます。


1.国籍取得届の提出をしようとする方が、

→ a.父又は母に認知されている子であること。(父母の結婚は条件になっていません。)

→ b.20歳未満の子であること。

→ c.出生から届出までの間、日本国民ではなかったこと。(※以前日本国民であった場合は、届出ではなく帰化申請となります。)

→ d.生まれた時に、認知をした父又は母が日本国民であったこと。


2.上記1のaからdに加え、認知をした父又は母が、現在も日本国民であること(死亡している場合は死亡した時に日本国民であったこと)。

※bに記載した他、平成23年12月31日までの経過措置により認められるケースもあります。詳しくは「V.国籍法改正による国籍取得届について」をご覧下さい。

③帰化とは、①・②以外の方法で日本国籍を取得する方法で、普通帰化・簡易帰化・大帰化の3つに分けられます。大帰化は、法務大臣が国会の承認を得て許可するものですから、一般の方にはあまり関係がありません。簡易帰化とは、日本人配偶者や日本人の子であった方、日本人の子であるが国籍法の改正(経過措置も含む)によっても国籍が取得できない方が申請するものです。主に普通帰化についてご説明いたします。


II.帰化の要件

大前提として、今の国籍を離脱して、日本国籍を取得する意思がなければなりません。


①住所

5年以上、生活の本拠地として日本に外国人登録をして住んでいること。

(注1)申請する際、在留資格が「就学」「留学」「研修」の方は、在留資格の内容上、帰化申請はできません。

(注2)申請しようとする年に初めて就職した方は、就職してから3年経過してから申請して下さい(ケースによって2年経過で申請できる場合もあります)。

②能力

20歳以上で、本国の法律でも法律行為ができる年齢であること。

③素行

素行が善良であること。

※例:過去3年間に駐車禁止違反5回までであることなど

④生計

申請者本人または同居している家族の資産や収入によって、暮らしていけること。

⑤重国籍防止

無国籍者か、日本国籍取得後に今の国籍を離脱できること。

⑥不法団体

日本政府を暴力で破壊する企て、主張、それらの団体、政党を結成し、または加入したことがないことなど。

⑦日本語能力

日本語の読み書きができること。

※⑦については、法律で規定されていませんが、日本人になるので当然のことです。

以上が普通帰化の要件です。「日本人の配偶者等」という在留資格をお持ちの方は、この要件の一部が緩和されておりますので、当事務所までご相談下さい。


III.帰化の申請方法及び必要書類について

a.申請方法

①住所地を管轄する法務局へ「帰化について相談したい」と電話で予約する。

ここで、申請書の記載方法や必要書類について説明があります。

予約は必ず行って下さい。なお、東京法務局(23区在住者)は予約不要です。

②申請書の記載、必要書類の収集

必要書類の収集は、時間がかかります。早めに準備することをお勧めします。

③相談に行った法務局へ電話で、申請の予約をする。

申請書の記載や指示された書類を全て集めたら、電話をして下さい。なお、東京法務局は不要です。

④申請書受理後、法務局による調査が開始

申請書が受理されましたら、調査が始まります。会社勤務の方は上司などに、個人事業をされている方は取引先などに確認の電話が行われる場合もあります。

⑤再度、申請した法務局で面接

申請後、調査で問題がないようでしたら、追加資料の提出や国籍離脱が可能かどうかの確認をされます。この日時は法務局から指定がされます。およそ申請から6カ月程度後に行われます。

⑥法務省本省へ書類送達

⑦帰化が許可され、官報に氏名が掲載

官報に氏名が掲載されて効力が発生しますが、実際には「身分証明書」を法務局から渡された時点となります。証明書受け渡し日時についても、法務局から指定されます。


- ご注意 -

帰化申請は、世帯(同居中の家族)単位で行いますので、世帯員の中で帰化意思がない方がいる場合は、原則として申請出来ませんが、例外的に認められるケースもあります。

申請してから結果が出るまでおよそ1年近くかかります。申請する際、在留期限が間近な方は、申請する前に在留期間更新許可を受けてから帰化申請を行って下さい。

申請中は、まだ日本国籍を取得したわけではありませんので、申請中に在留期間が切れそうな場合は、必ず在留期間更新許可申請を行って下さい。この申請を忘れると、「不法滞在者」となってしまいます。

申請中に出国される方は、必ず今まで通り「再入国許可」を受けて出国して下さい。また、出国前に帰化申請書を提出した法務局に「どの国にどの期間出国する」か連絡して下さい。

申請中に、住所が変わった、勤務先が変わったという方は、帰化申請書を提出した法務局に連絡をし、変更届を提出して下さい。変更届の用紙は、申請する際渡された「帰化申請の手引」にあります。

b.必要書類

職業などに関係なく共通のものです。

1.申請書類(法務局から渡されたもの)2通

2.顔写真(なるべくカラーで。5cm×5cm)2枚

3.最終学歴の卒業証明書1通

卒業証明書の代わりに卒業証書でも可。この場合コピー2通。在学中の方は、在学証明書及び成績証明書が各1通必要。

4.技能証明書(運転免許証・各種資格免許証)のコピー1通

運転免許証のコピーは、表・裏面両方必要。

5.運転記録証明書(免許がある方のみ)1通+コピー1通

過去3年または5年の記録について

6.預貯金残高証明書1通+コピー1通

7.不動産登記簿謄本(または現在事項証明書)1通+コピー1通

日本に不動産をお持ちの方のみ。

8.住民票1通+コピー1通

過去5年分の居住記録があるもので、記載事項に省略がないもの。但し、マイナンバーが記載されていないもの

9.在留カードのコピー2通

表・裏面とも必要

10.パスポートまたは在留資格証明書の全ページのコピー2通

11.国籍証明書1通+コピー1通

韓国・台湾の方は本国の戸籍謄本、その他の国の方は公証書や出生証明書など。

12.次の戸籍関係届記載事項証明書または受理証明書1通+コピー1通

①出生(日本国内で生まれた方のみ)

②婚姻(日本国内で婚姻された方のみ)

③死亡(ご両親又はご兄弟で日本国内で死亡された方のみ)

④離婚(日本国内で離婚された方のみ)

13.日本人の戸籍謄本1通+コピー1通

次の場合に必要となります。

①日本人と婚姻されている方

②日本人配偶者と離婚された方(離婚の記載がある謄本)

③日本人配偶者が亡くなられた方(死亡の記載がある謄本)

④日本人と婚約なさっている方(その方の謄本)

⑤ご両親やご兄弟に帰化された方がいる(帰化した記載がある謄本)

14.審判・判決謄本(外国・日本問わず)1通+コピー1通

離婚や親権など身分関係で裁判所が関与した方のみ

15.住民票1通+コピー1通

次の場合に必要となります。

①日本人配偶者がいる方

②世帯員に日本人がいる方

③日本人婚約者がいる方(その方のが必要)

16.診断書1通+コピー1通

現在、病気にかかっている方や入院されている方のみ

17.表彰状、感謝状(もらったことがある方のみ)コピー2通

18.株式保有証明書(株式をお持ちの方のみ)1通+コピー1通

19.スナップ写真(家の前で撮影されたもの)4枚程度

その他に、納税証明書など必要となりますが、申請される方のご職業によって、変わります。当事務所にご相談下さい。

c.費用について

法務局への申請自体は無料です。市区町村役場や税務署などで取得する証明書類の手数料はかかります。

なお、当事務所へご依頼の場合は、申請書類の作成(ご本人が作成しなければならないものは除く)、証明書類の収集、交通費などかかりますので、事前に当事務所へご相談下さい。


IV.法務局の所在地について

各都道府県の県庁所在地を管轄する法務局、地方法務局を記載いたしました。

ご自分が申請する管轄法務局やその支局については、法務省民事局ホームページをご覧下さい。


→ 法務省民事局フロントページ


V.国籍法改正による国籍取得届について

改正前も「子供の出生後に認知し、その父母が結婚した」ことにより、届出をすることで国籍を取得することができました。その後、平成20年12月12日の国籍法改正(平成21年1月1日施行)に伴い条件が変わりました。

次の条件を満たしている方は、住所地を管轄する法務局に届け出ることにより、日本国籍を取得することができます。

但し、嘘の届出については罰則(1年以下の懲役又は20万円以下の罰金)が適用されます。

1.新しい条件(国籍法第3条)

i.国籍取得届の提出をしようとする方が、


→ a.父又は母に認知されている子であること。

  ※父母が結婚しているかどうかは条件に入りません。

→ b.20歳未満の子であること。

→ c.出生から届出までの間、日本国民ではなかったこと。

  ※以前日本国民であった場合は、届出ではなく帰化申請となります。

→ d.生まれた時に、認知をした父又は母が日本国民であったこと。


ii.上記iのaからdに加え、認知をした父又は母が、現在も日本国民であること(死亡している場合は死亡した時に日本国民であったこと)。

2.手続について

届出をしようとする本人(15歳未満は父又は母などの法定代理人)が、住所地を管轄する法務局に行き、必要書類を提出して行います。必要書類は、管轄の法務局に事前に確認して下さい。

本人が外国で生活をしている場合は、現地にある日本大使館又は領事館で手続を行うこととなります。

3.施行に伴う経過措置について

改正後の国籍法施行時に20歳を超えているなど、上記1の条件に該当しない方でも、次に当てはまる方は届出をすることにより、日本国籍を取得することができます。

但し、経過措置に該当する方は平成23年12月31日までに届出を行って下さい。これを超えますと届出により国籍を取得することはできません。帰化申請による方法となりますので、ご注意下さい。

経過措置についても嘘の届出をすると、罰則(1年以下の懲役又は20万円以下の罰金)が適用されます。

iii.昭和58年1月2日以後に出生し、出生した時に父が日本国民であり、20歳になるまでにその父に認知され、その父が現在も日本国民である方(父が死亡している時は死亡時に日本国民であったこと)。〈国籍法附則第4条の規定〉

iv.平成20年6月4日までに、改正前の国籍法に基づく国籍取得届を提出したが、父母が結婚していなかったために、日本国籍を取得することが出来なかった方。〈国籍法附則第2条の規定〉

v.上記ivの条件に該当して日本国籍を取得した方の子供で、次の2つとも満たしている方

①父又は母(つまり今回国籍を取得した方を指す)が、日本国籍を取得する前に生まれていたこと。

②父又は母(つまり今回国籍を取得した方を指す)が、改正前の国籍法に基づく国籍取得届を提出した後に生まれたこと。〈国籍法附則第5条の規定〉